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満渕研究室訪問レポ
ここで再び、ラットは頭に電極をセットされる運命にある。今回はレバーを押すときに使っている前肢の筋肉の運動を司る
領域がターゲットである。レバーを「押しているとき」「押していないとき」で出されているシグナルにどのような違いがあるのか、
ラットカー1の時と同様に記録する。この実験の利点は、レバーを押すという行為が単純であるため、それに対応するシグナルが
どれであるか、解釈しやすいことである。次に、レバーと車のモーターの接続を切り、代わりにラットの電極をコンピュータを
介して車のモーターに接続する。今、前方にミルクを見たラットはレバーを押し、台車は前進するが、ラットの意に反して(?)
車を動かす元になっているのは「レバー」ではない。ラットの頭に刺された電極がキャッチしコンピュータが解析した、
「レバーを押せ」というシグナルである。
ここで、車が動くまでの情報伝達のしくみを、ラットカー2の場合を例にとって図示してみると、
@脳内の「レバー押せ」シグナル→前肢筋肉→レバーが下がる→モーター
A脳内の「レバー押せ」シグナル→電極→コンピュータ→モーター
からだ(前肢)を使った機械の操作が、頭脳で“考える”こと、つまり頭のみを使った機械操作に、
ラットの気づかないうちにシフトされているのである。(ラットカー1でも原理は同じ)
電極で計測している電位変化は上で説明した“活動電位”そのものではなく、活動電位の発生に付随して起こる、
神経細胞周辺の微小な電位変化である。(活動電位を計測するためには神経細胞自身に電極をささなければならず、
このショックで細胞がやがて死んでしまうのだ)そのためわずかなノイズにも計測結果は左右され、
正確なデータを得るために様々な工夫がなされている。ラットカー2において、モーターは台車を走らせる滑走路の下に
置いた磁石を動かすように設置。直接台車につけるとモーターの振動が邪魔になるからである。
さらにマウスの餌に硬いものを与えると咀嚼時の振動が計測を妨害するためミルクを与えている。
満渕研で特に力を注いでいるのが電極の開発である。取り外しの際に脳を損傷しないことは重要であるが、
その実現には試行錯誤の積み重ねがあったという。現在はさらなる損傷の軽減を目指してより細く糸のような形状に近づけたものや、
柔らかい素材で出来ており中にチューブを通し、薬品を流し込むことのできるものの研究・開発を進めている。
さらに、電極数を増やしてより細かなシグナルを得ること、電極を介した感染症の阻止、
ラットの個体間にあるシグナルの差をいかに読み取っていくかなど課題は尽きないが、
この技術の発展は福祉機器への応用(現在実用化されている人工内耳では22のチャネルでシグナルを脳に送っている)や、
“生体と機械システムをつなげると何が起こるのか”というより根本的な問いへの答えも示してくれる。
まさに今後が期待される研究である。実際にラットが“運転”しているところが見られなかったのが残念であった。
(文責 徳田周子)
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